其之拾七    エコって言うけど・・・ホントかぁ? 
エコエネルギーとかカーボンニュートラルって何かウソ臭い
2006年ころからいきなり脚光を浴びてきて話題になっているバイオエタノールや食用油を再利用する植物由来の燃料。植物を原料にしているので、燃焼によって排出されるCo2 は植物の生育中に吸収しているので「チャラ」になるというアレである。
本当にその通りなんだろうか?何かウソ臭い。そりゃ生育中に吸収したCo2とそれを原料にした燃料を燃やして出るCo2は計算上チャラになるであろう。が、絶対に「作物からバイオ燃料を精製する段階でエネルギーを使う」ということである。「1石油エネルギーのバイオ燃料を精製する際に0.5石油エネルギーを使う」ので総Co2 排出量は「燃料1+精製0.5」で1.5ということらしい。
化石燃料の枯渇が懸念されている昨今、代替燃料の製造技術としてのバイオ燃料は必要だと思うが「何が何でもバイオ燃料」ではないだろう。
アメリカでは食料、飼料用のトウモロコシを国策としてどんどん燃料用に転化しているらしい。将来、生産量約2.8億トンの半分近くを燃料用に転化すると言う噂があるらしい。何故食料用を燃料に? 中東からの原油高や自国の埋蔵化石燃料の延命とも思える。エコの為なんかではなく儲かるからだろう。
世界的な穀物、特に小麦の国際価格の上昇で2007から2008年にかけて日本国内では食糧、特に小麦を原材料としたものの価格が引き上げられている。
これを受けて最近メディアで、アメリカ国内での大豆等からのバイオ燃料用のトウモロコシへの作付の切り替えを「世界の食糧事情が逼迫しているのに、食用から燃料への転化は如何なものか?」と言う声をTV等で耳にするが、それは「日本人の勝手な言い分」でしょうに。ばっかじゃないの?
大体、アメリカ国内で何を作付けしようが「アメリカ国内の事情」国策でしょうに。他の国からとやかく言われる筋合いの無いモノである。それを今まで通り「安いモノが買えなくなった」ので難癖付けているだけである。
立場変わって日本が諸外国から「この世界の食糧事情が逼迫しているご時世に、何を減反なんぞしているんじゃ!減反するくらいなら余った農産物を食糧援助に回せ」って言われる様なもので、大きなお世話である。我が国にも「日本国内の事情」があるのと同じである。
我が国もミニマムアクセスで入って来た外国産米や平成8年産や9年産なんて古い在庫の政府米でバイオエタノールを作ればいいのである。2004−2005年の原油が1バレル80ドル前後の頃に、バイオ燃料の「原料価格が1キロ40円以下でないと油化と比較して採算が合わない」と言われていたのだが、2008年半ばの原油価格は1バレル150ドルを超えているので、この価格ならそろそろ「採算は合う」ハズである。
バラ蒔きの転作補助金なんか出さずに国民みんなの役に立つのこっちの「エネルギー対策の技術」に税金を掛けた方が世の中の為と思う。バイオ燃料の原料となる穀物に補助金を上乗せして政府が直接買い上げる方が税金を使うにしても世論は納得するはずである。
最近は食用作物を原料にせずとも「セルロース」ワラとか植物体を原料にバイオ燃料を精製する技術も確立されて来ているので量はともかく食用と競合する必要がない」のである。
エタノールエンジンが21世紀に出現した「新技術」と思っている人も多いが、アメリカでインディー500なんかのIRLのレースでは1960年代から使われていたので決して新しい技術ではない。
いわゆるカーボンニュートラルってらしいが、何かウソ臭い。100歩譲って燃焼で排出するCo2と生育中に吸収するCo2でチャラになるとしよう。しかし、植物からエタノール=アルコールを精製するときにエネルギーを使う訳であり、それが電気であろうが、そのエネルギー源に石油を使っていればバイオエタノール使用時のCo2総排出量は精製時Co2分がかえって増える
比較対象が生育時吸収Co2=燃焼時排出Co2だから、栽培時に使用される肥料等のエネルギー、収穫、運搬時のCo2 排出量は計算に入っていないハズである。
なおかつエタノール燃料にすると「馬力が落ちる」とIRLにエンジンを供給しているホンダのエンジニアが語っていたのがレース関連雑誌に載っていた。このためガソリンで3000ccだった排気量をエタノールに燃料変更した2007年に3500ccに拡大された。
また、エタノール等のアルコール燃料は金属を腐食させる性質を持っているらしく、燃料系統の材質をエタノール燃料用に交換する必要性もあるらしい。こと、安全性に直結する部分なのでこれも厄介な問題である。
エタノール燃料とガソリン燃料のCo2 排出量が同じならば、出力の高いガソリンの方がエネルギー効率は良いことになる。ウラを返せば、同じ仕事量ならバイオエタノールのが燃費が悪いと言うことになるハズである。
Co2の排出量を減らそうと思えば、「燃費の良いエンジン」「エネルギー効率の言いエンジン」を開発すれば良い訳で、熱効率を考えれば断然ガソリンエンジンよりディーゼルエンジンである。 熱効率とは、供給した燃料の発熱量と、実際に有効な仕事に変えられた熱量の割合をパーセント(%)で表したものでガソリンエンジンが20−26%なのに対してディーゼルエンジンは35−45%である。
ヨーロッパでは主流になりつつあるディーゼルエンジンだが、日本では「遅い」「汚い」「うるさい」のイメージで極めてイメージが悪い。
これは、日本の自動車排気ガス規制で、とにかく窒素酸化物 Noxの削減を優先したせいで、やれ光化学スモッグの原因だ、酸性雨の原因だと言われたがその理由を誰もちゃんと説明したことがないそうである。(イスズのWEBサイトに「ディーゼルコミック」って面白いページがあるので一読を。)
その中にも分かりやすくあるが、ディーゼルエンジンを完全燃焼させるとNoxが増える。それ故に馬力や燃費、熱効率を落として、「黒鉛モクモク出してもNoxを減らせ!」これが日本の排ガス規制だそうだ。
対してヨーロッパは、「とにかく目に見える大気汚染を防ぐ」ということを主眼に置いて「黒煙の削減」からはじまり、それに平行してNoxも黒煙の元の粒子状物質(いわゆるPM」も減らそうと言うことでエンジン本体と周辺技術の開発が進められたそうである。
2006年ー2008年のルマン24時間耐久レースでアウディのディーゼルエンジン車が3年連続優勝していることを見ても「ディーゼルは速い」のである。
自動車でエネルギーを効率よく使うと言う点ではハイブリッドカーがやっぱ上手でしょう。燃料の熱エネルギーを運動エネルギーに換えて加速し、減速するときは運動エネルギーをブレーキで熱エネルギーに換えて捨てていたのをハイブリッドカーは「回生ブレーキ」で捨てるハズのエネルギーを回収して再利用。2007年の十勝24時間レースでスープラのハイブリッドカーが優勝しているので、ハイブリッドカーも「しっかり早い」のである。
実際高速道路の合流から加速なんかではエンジンよりもトルクの立ち上がりの早いモーターでの加速の時のハイブリッドの早いコト。バイオエタノールエンジンを使うよりハイブリッドにした方がCo2排出量は減りそうである。
車両が内燃機関で燃料を燃やしている以外にも、発電等でCo2は排出されているわけで、電力各社が「Co2が出ません」ってCMやっていた「オール電化」住宅だが2007年に公正取引委員会からこのCMに対して排除勧告が出されたと記憶している。
そりゃ家庭内で「火」を使わないから「Co2が出ません」わな、その場では。しかし「やかん1杯のお湯を沸かす」のに要る熱量、やかんの容量を2リッター、水温10度としてこの水を100度まで上昇させるのに必要な熱量は2000x90=180kcal。これをガスで湧かすのと、石油またはガス、原子力エネルギーで発電し家庭で電気エネルギーを再び熱エネルギーに変換すれば「熱効率」でどっちが有利?と言えば聞くまでもないであろう。
「何が何でも電気」は間違いだと思う。
とにかく電気を「何かを燃やして」発電するのではなく自然エネルギーで発生させない限りCo2は大量に発生しているはずである。エネルギー効率から言えば電力会社が供給する電気の中では原子力発電が群を抜いて良いと言えるはずである。(安全性は別ね)
かと言って、これも適材適所で照明なんかでは電気が一番良いはずである。照明も白熱灯から蛍光灯、今後はもっと消費電力の少ない発光ダイオード(LED)に変わっていくと思う。いくらエコだからって、「切れない、長寿命、低消費電力」って言っても20w蛍光灯サイズのLED灯が1本1万円では「正直よー買わん」
燃料だけでなくCo2排出は、「何かを燃やせば・・・」なので
例えば「紙を燃やした時」なんかは、どうなる。紙は木材由来のパルプで作る。なら木が生育中に吸収したCo2は莫大なハズで紙を燃やしたときのCo2は伐採、運搬、製紙の段階で排出されたCo2もカバー出来ていそうな気がする。なら薪(まき)を燃やした時はどうなんだ?紙と同じで森林段階で吸収したCo2でカバー出来そうな気がするが違うのだろうか?
紙と言えば2008年に年賀はがきに古紙の混入率に偽りがあった製紙業界が問題になったが、この1−2年前に大手製紙会社が
「古紙100%の再生紙は環境に悪いのでホンマは作りたくない」ってホンネをブチまけた。
製紙会社が言うには、古紙の混入率が上がれば上がるほどバージンパルプの新紙より製造段階でエネルギーが余分に要りCo2の排出量も増える。と言うことだそうだが、古紙を再利用してるという「良いイメージ」があるのでなかなか言えなかった。そうである。
これもイメージが事実を覆した例である。
かと言って、「ならエネルギー無駄遣いの元の古紙は全部捨てて燃やしてしまえ」って乱暴な理屈も間違えだと思うし
ならバンバン森林伐採してバージンパルプで新紙を作ればいいかというと、これは誰が考えても「否」である。森林伐採による表土の流亡や吸収Co2量の減少、植林してから伐採までの期間の長さを考えても闇雲に伐採すればいい理由はどこにもない。
すぐに現代人が陥りがちなYesかNoの、0か100の二元的な単純な答えじゃなく「どうやって折り合いを付ける」資源の再利用のしかたを考える必要があるかと思う。使える限りの古紙の再利用も必要だし、エネルギーが無駄にならない程度に古紙を混入して、再生を考えた森林の計画的な伐採を組み合わせば、自然環境もあまり壊さず、エネルギーを無駄に使わないハズである。
日本人にはそのくらいの「智恵」はあると思う。事情の違う緒外国の方式や考え方に惑わされずに「日本の事情にあった循環型社会」を考え直す時期ではないかと思う。
今とは社会環境がかなり(全くではないはずである)違うが鎖国をしていた江戸時代は究極の循環型社会であった、と言われている。江戸時代の人間に出来たのだから、今の日本人に出来ないワケがないと思う。
過去の良いところと現代の技術を「ええとこ取り」すれば、もっと洗練された社会が出来るはずである。
それこそが、智恵であり文化だと思う。究極のハイブリッド社会。