27、玄米用色彩選別機  KG−A205  その1
別に新しモノ好きな訳では・・・ あるっ!
農家が直販を行うに当たり、今や避けて通れないのが「商品の品質」というか「大手精米会社」が米穀店やスーパー等の小売店に並んでいるような、商品と同等の「見た目のキレイさ」である。
今や昔のように、「農家の直販品」だからとか「無農薬」だからという理由で商品の玄米や白米に、異物は以ての外だが、カメムシの被害粒などのいわゆる「汚い米粒」の混入は「売り手の言い訳にしかならない」のである。
誰だって自分の食べる米に「黒い汚れのある米なんて食べたくない」のである。
自分の作った米でもご飯を食べるときに米粒に「黒い点」があれば、ハッキリ言って良い気分はしないのが正直なキモチ。
そういう観点から、精米の行程において「色彩選別機」は不可欠である。平成6年頃に精米施設を導入した際に5psの精米器の能力に合わせて5チャンネルの色彩選別機を導入し白米において色彩選別を行って来た。が玄米販売においては、通常の籾摺り時に行う選別の状態で販売してきた。
まぁ、自家販売を行う際には対面販売でお客さんに説明を行えるので、これで問題はないが直販所等で店舗へ並べて不特定多数のお客さん相手に小分けした玄米を販売する際には、混入した籾やカメムシの被害粒、極端な緑の未熟米や、ここ近年古代米の赤米が混入したために玄米でも色彩選別処理を行わないと「見た目にキレイな商品」が出来なくなってきた。
で、必要となるのが「玄米選別機」なわけで、基本的には「色彩選別機」にガラス等の透明な異物を選別する機能が付いたものである。
サタケのユニット式の光学式の色彩選別機。もっともポピュラーな定番機種。主に白米中の着色粒を選別する。お値段1チャンネル約約50万円。5chで250万円、10chで約500万円 サタケの新鋭CCD式のガラス選別機。光学式の着色粒以外に透明なガラスまで選別出来る現在主流になりつつある方式。お値段1ch約50−75万円。7ch525万円。14ch787.5万円
上記写真の様な値段である。ハッキリ言ってなんぼ何でも「高過ぎるやろ」ってのが農家の正直な気持ち。
一般的な色彩選別機は、傾斜した溝を一列に流れる米粒を蛍光灯等の光源から出る光を対象物の「米粒」に照射して、その反射率で「良品」と「不良品」を区別し、小さなノズルから出る圧縮空気で不良品を1粒1粒「撃ち抜いて」いる。良、不良を識別して撃ち抜くタイミングは、それこそ「神業」である。識別方式が複雑になればなるほどこの「撃つ」精度は益々精密さを要するワケで、シロートの私が考えても、このアイデアを具現化して製品化するのには想像を絶する「ジミだけどスゴい」努力があったと考える。
玄米選別のため中古の光学式の色彩選別機を導入したが、いかんせん基本的には白米用の選別機なので処理能力は、白米選別時に「1時間に1チャンネルあたり1俵」で5チャンネルなら5俵/時間、10chで10俵ほど処理できるが、玄米を選別すると能力は極端に落ちて20chで1時間に4−5俵しか選別出来ない。これでは余りにもあらゆる面で効率が悪過ぎ。
これを踏まえて、玄米も高能率で選別出来る機械を考えると、現在主流になりつつあるガラス選別機。文字通り白米や玄米中の透明なガラスまで選別出来る最新鋭機種となるのである。上の写真右のガラス選別機は、CCDに加え透明ガラスの選別に近赤外線を使い透明ガラスを識別しているそうである。すると、異物の識別にCCD画像処理と近赤外線との2方式の併用なら処理するプログラムは、スゴい精度を要するハズだし、むちゃ複雑と思う。
確か2004年のクボタのメーカー展示会で出来たばっかしのガラス選別機。最近農家の直販で玄米販売の比率が大きくなってきたので玄米の選別用に開発した従来の蛍光灯の反射率で選別する光学式ではなく、CCDを使った機械。今まで光学式で選別幅が0.2mmだったのがCCDの採用で0.08mmの精度まで向上。
玄米の中に透明のガラスやら、石やら、白い樹脂のペレットやらを混入させてデモを行っていたけれど、その処理能力のスゴいこと、60chだからだが「ホンマに選別出来てんの?」って程の勢いで出る出る。今使っている光学式のカラーマスター20chに比べると、玄米用の選別機なので夢のような処理速度。
60ch相当なら価格は今までの感覚で1ch40−50万なら2000万−3000万円?「で、どこのOEM製品」と訊くと
「OEMでなくウチの内製です。60ch相当品が定価で780万+税の819万円。作って発売した手前、1台くらい契約出来んとカッコつかないんで半値までとはよー言いせんが今なら500万円でどうですっ?」
って言われてもなー。「色選だけで500万の金はよー出さんもんなー」でこの時点では却下。
それから2年後2006年に10ch相当の同方式が破格の230万円。「うっそー安っすー買おっかなー」って思いサタケを含めてカタログを貰って検討するも他社は上記のような値段。サタケの人曰く「クボタさん、あんな価格設定では絶対に利益なんか出ないハズだけど、どうなってるんだろー?」との話。2007年夏頃に見積もりを依頼したところが、 「10月くらいに20ch相当の新機種が出る予定です。まだカタログも刷れていませんので、」ってカラープリンターで刷った「プロト最終型」とおぼしき機械の写真と諸元表を貰い「価格も大体400万円前後らしい」との話。
後日談だけれど、「とにかく価格を下げるのに近赤外線を使わずCCDで画像解析して、光源の反射光の屈折率をスペクトラム分析してガラスを識別しています。近赤外線を使わなかった理由はセンサーとそれに関わるセンシング部分を無くしてのコストダウンと、CCD識別と近赤外線の識別との選別のラグ(ずれ)のズレから生じる選別プログラムミスのリスク回避。その分CCDの画像処理精度を上げることに専念しました」とのコトです。ん・・・分かるようで分からん・・・・・
いつものコトながら悩んで悩んで迷いまくった挙げ句、「新しい方1つ」と現物も見ないうちにソッコーで予約。
で、収穫作業、乾燥籾摺りも終わり2007年11月にやって来たのがこれ 

玄米用色彩選別機 KG-A205  製造番号 10013

わざわざ設計担当の技術者の人も来て頂き
「えっ!もう1万台も売れとるんですか?」
「ちゃいます。機体番号10000から始まって、10台は社内実験用ですから世に出た3番目の機械です」
だそうです。
とりあえずコンプレッサーのエアーと電源を繋ぐ。何が良いかって上の写真のにある様に「100V電源のみで使える」し、張り込みホッパー、昇降機付きの「これだけで使える」ユニットモデル。後は良品出口に計量器を据えるだけである。
で、これが、電源とエアを繋ぎ計量器を引っ張り出してきて、とりあえず試運転の出来る状態になった。電源投入してすぐに使える訳でなく機械の暖気(準備)時間が約30分。蛍光灯の光度や色温度が安定する時間かと思うけど長過ぎないかい?ホッパーの容量は30kg一袋がちょうど張り込める容量。
選別がはじまると、予想はしていたけど「は、速っ!」30kg1袋が約3分半、時間あたり17袋510kg。感度、流量ともにデフォルトの設定でこの処理量。加えて選別をかける玄米は赤米が5%ほど混ざったもの。これだけ混入率が高いとさすがに全部は選別不可能だけれど仕上がりは混入率1%以下。異物混入率3%以下なら1回の処理でほぼ抜ける。
速度はともかくデフォルトでは選別精度にまだまだ問題があるので、精度を上げるのに、感度や流量をあれこれ設定してもらったのが「とりあえず」この設定。

スポット(小さな点)とワイド(粒全体)の感度を変更(設定幅±100段階の200段階)、流量を絞って混入率5%の異物はほぼ100%抜ける。これで処理速度30kg1袋あたり5分なので、1時間あたり12袋360kg。
まぁ、ほかの作業をしながらの原料玄米を投入しつつ一人での作業なので充分な処理速度である。
つづく To Be Continue