5、豊作のまず手始めに土作り
冬のお仕事
 収穫が済んで乾燥籾摺りが終わって「やれやれ一年の仕事が終わり」ってな訳にはいきません。収穫が終わった時点から次の年の作付けが始まっていると言っても過言ではありません。どんな作物を作ろうが、一番肝心なのは「土作り」です。
具体的な作業では、「荒起こし」=一番耕、刈り取った後の田んぼを耕します。
耕すと起こす。
ウチらの地域では一般的に「起こす」と言います。あまり「耕す」とは言いません。
起こすは、本来鋤(スキ)で土を反転させて起こす。に由来している言葉だと考えられます。それに対して「耕す」は、「起こした」土を砕くき(砕土)畝(ウネ)に上げる。この3つの動作を総合して「耕す」と守田志朗氏が
「農業にとって技術とはなにか」(農文協)の中で書いています。
 荒起こしの目的は、冬場に放置して寒気にあて日に曝(さら)す。それが有害ガスの排出や、刈り取った後の稲株や藁等の有機物の分解の促進、空気を土中に取り込む、(昔理科で習った「気圏」を増やす。)取り込まれた空気が有機物を分解する微生物や来年作付けするイネの根のためだと言われています。これらを総して「乾土効果」と言います。
 荒起こしと言われるくらいですから、荒く耕します。鋤(スキ)=プラウを使って反転させたり、ロータリー耕でも稲株が埋まって耕した後の土塊はゴロゴロと大きくて、この大きい土塊を冬場の霜や寒気にさらして「凍(い)てさせる」方が良いと言います。土塊の大きい方が土の乾燥も確かに早い。早場地帯のウチらでは収穫も9月中旬までに終わる場合が多いため比較的早く(早い人はまだ稲刈りが終わっていないウチから起こすもんな)荒起こしを済ませる傾向があります。
荒起こし作業。寒い時期の夕方になるとやっぱキャビンは必要だな。ロータリーを低速にしてゴロゴロと。土に空気をたっぷりと含ませる。
 あまり早い時期に何度も耕して砕土(土を細かく)をしてしまうと土中に空気をあまり含まず窒息状態に。雨でも降ろうものならベターっと幕を張ったようになって、これがパリパリに乾くと一枚板状態。かと行って生乾きの時に耕すともっと悲惨。この土塊の状態を土壌学では、「団粒構造」と言います。例、理想的な団粒構造
荒起こしが済んで土が程良く乾いたら土作りの為の有機物、米ぬかや鶏糞を田んぼにバラ蒔きます。圃場の条件にもよりますが大体年内から1月中に有機物の散布を行えると作業の段取り的にも有機物の分解にも都合がいい。冬の作業に関してはほとんど降雪がないので雪深い地方の農家より条件的に恵まれていると思います。
直販仲間の「エッグハウス川北」謹製の「高級発酵鶏糞」(と袋に書いてあった。)トラクターも作業機も超旧式30年モノ。当然2駆で必要最低限なモノ以外は何一つ付いていないスーパー7みたいな機械。もっとも、この機械がまともに走れないような圃場条件では散布作業に適さないってこと。散布量も最大、作業速度も全開で田んぼの中を爆走。ハッキリ言って散布時間より袋を切って機械に投入する時間の方が長い。
 直販仲間の養鶏農家から分けて貰っている「粒状の発酵鶏糞」を田んぼへ100−150kg/反を田んぼにトラクターに付けた(数年来付けっぱなし)「ブロードキャスター」でバラ蒔きます。粒状に成形してあっても熱処理をしていないので肥効も安定しているし分解も早い。でも何が良いかって肥料屋さんから同じモノを買う5−6分の1の価格で入手出来るので経費節減この上なし。ピュア鶏糞100%で完全に発酵しているので従来品より臭くない。(って言ってもやっぱ鶏糞、それなりに臭います)鶏糞以外にも精米で出た米ぬかや籾殻も田んぼへ帰します。こうして、鶏糞や米ぬか等を田んぼに入れると土壌中の微生物の働きが活発になりワラの分解も進みます。
散布したあとは土との攪拌の為に軽く耕し(攪拌耕起)ます。程良く砕土されてよりよい団粒構造を形成するための準備でもあります。この攪拌耕起の後に「2番耕」を行います。(時としてこれが2番耕を兼ねる場合もあります)
つづく To Be Continue