其之四 どーせなら、ここまで考えなさい。
 で 、農薬も化学肥料も使わずに栽培するのなら当然使うのは、一般的には堆肥です。牛さん、豚さん、鶏さんの畜糞を材料に堆肥 を使うわけですが、ここでよーく考えてもらわねばならないのがその動物さん達は、何を召し上がっているのでしょう?現在、日本の畜産は、哀しいかな輸入飼 料に頼っています。消費者のみなさんが安全性に問題視する輸入モンです。今や狂牛病騒ぎの肉骨粉以来国産の安全神話も崩壊しかかっていますが・・。やれ、 クスリ漬けだとか、何が入っているやらわからんとか、どうやって作っているのかギモンとか、モンク言い放題の輸入モンです。もし、本当に徹底的に安全性を 言うのなら飼料の生産されている状態を見てきて、これなら安心ですので飼料に使ってその堆肥で生産した農産物を売ってください。のレベルまで行かないと、 うわべだけのモンです。
 理想を言えば、無農薬、無化学肥料で栽培した国産の飼料を家畜に与えてその動物が生産する有機物で農作物を生産するといいので すが、そんなコトをしていれば、完全に飼料と畜産物の両方で供給が追いつきませんし、完全に有機物栽培、無農薬なら収量は極端に落ちますから、農産物の需 要は満たせないでしょう。今100%以上の自給率の米ですら不足するでしょう。こんなコトばっかり言っていてたら自給率の向上以前の問題です。第一最初に 投入する堆肥はどこから作るの?っちゅうと玉子が先か、鶏が先かの次元になっちゃいます。
 現在の稲の栽培面積と米の収量から算出すると国内で生産される「稲わら」の量は900万トンだそうです。米の生産量よりちょっ と少ない重量と考え下さい。このわらを全て飼料に回していくと今度は、米の生産能力が落ちます。というのは、現在ここまで稲の収量が上がったのは、化学肥 料や農薬、品種改良と栽培技術の向上だけでは、ないのです。昔は田んぼのわらを全て田んぼの外へ出して脱穀し、飼料やむしろ、縄、俵など資材として使用し ていましたが、現在までのコンバインの普及で稲わらを全て水田に還元することで田んぼの地力を増進させたおかげです。2年や3年では、目に見えた効果は現 れませんが10年20年スパンで考えるとかなりの有機物が田んぼに供給されたことになりますし実際地力も大幅に増進しています。
 また、現在すでに一部で行われていますが、畜産農家が稲作農家の水田の稲わらを回収し、その田んぼに畜産農家が堆肥の散布をす る物々交換式循環型農業。 江戸時代以前では、当たり前の日本農業本来の形。実際ウチもやっていたことがありますし、(畜産農家の都合と天候の問題で中断 中)四日市の知人なんかはこれで結構効果を上げています。お互いに知ったモン同士で行うのでトラブルは起きないし何しろモノに信頼出来る点が最高です。現 在は知り合いの養鶏農家の発酵鶏糞を冬場の土壌改良材として投入。
で、今のような安全で美味しい肉や玉子をこれからも食べたいと言うのならば、例えば稲わらよりも生産性の高い飼料作物を栽培したり少しでも飼料の自給率も向上させねば、行き着く先は同じです。
少しでも分かって頂けました?
自給率が低いっちゅうコトは、将来非常にコワいこと。
だということが。ご存じかと思いますが参考のため下表をどうぞ。
参考資料 自給率の推移   単位%    農水省資料より
項目/年 昭和50年 昭和60年 平成元年 平成5年 平成7年 平成8年 平成9年 平成10年
穀物(食用+飼料用)自給率 40 31 30 22 30 29 28 27
主食用穀物自給率 69 69 68 50 64 63 62 59
カロリーベース自給率 54 53 49 37 43 41 41 40

ちょっとだけ、みんなで考えてみませんか?
のページに世界の穀物の生産量、収穫面積、耕地面積のグラフがありますので、こちらの方も見ておいて下さい。