其之拾参 F1(一代交配品種)二世はどうなる?
面白半分の実験。自家採種の2年目作付で大笑い
文化、命の糧と見るか?商品と見るか?商系の種子事業
 ここ数年来、商系の種苗事業が盛んになってきています。世界的に見ても遺伝子組み換えのようなものを含めて「種を売る」って行為ははっきり言って「ウハウハ儲かる」わけで特に最近イネでも野菜のような「F1」一代交配種が幅を利かせています。
 そりゃ一代交配ですから自家採種が出来ないので毎年毎年、種が売れたら「ウハウハ」どころか某穀物メジャーなんかは、種子事業で世界中の食料生産を牛耳ろうとしていたってウワサが以前あったくらいです。総じてこの手のF1品種は多収がウリで「反10俵は軽い」が謳い文句です。多収を目的でF1を作る農家が増えるとどうなるでしょう?
 場合によっては超トンデモないことや、怖いことになっちゃいます。考えてください。自家採取が出来ないので種子は全量購入となり作り手にとっては大変な負担増ですし、もしこの品種が「ハズレ」だった場合は大幅に生産量が落ち込みます。種苗会社は、そこまで面倒見ないでしょう。「ハズレ」の意味は、「その年クセにあわなかった」場合や「品種的にハズレ」の場合も考えられます。イネだけでなく世界の主食たる主要穀物が全て大減収すれば冷夏による不作レベルでは済まないでしょう。
 今でこそ品種改良は公的機関が行う場合が多いのですが以前は「篤農家」が新品種の開発なんかも行っていたそうです。以前テレビで「今はコシヒカリ系」の品種が幅を利かせているが、場合によってはこれはとんでもないコトになる。とか言ってましたが、その意図がイマイチわからん。コシヒカリが昭和38年にデビューしてから平成15年までちょうど40年になるわけですが、考えるに40年もの間主流であり続け、農家が自家採種を繰り返していても「先祖帰り」や「変異」の少なさは(ないとは言えない)育種的に安定した秀逸な品種だからでしょう。
 話しを戻してコシヒカリのように育種的に安定な品種の対局にあるのがF1一代交配種でしょう。「種を買った一年ポッキリしかその品種であることを保証ない。2年目は何が出てくるか分からないので保証しません。」と言えば、悪意がある場合、多収で通常品種なのにF1と偽って毎年種子を売ることも可能です。2年目を作らないと正体が分からないわけですから。
  「保証せん」と言われれば、生活の掛かった農家はそんなリスクをまず犯しません。でもウチのような「ヒネクレもん」の「面白好き」は「なら作ったらどうなるんや?」の「を根性」が先に立つわけでして、やってみました。F1品種の2世。
  平成13年に知り合いの先輩が「三井物産」のF1品種「みつひかり」(三井だからミツヒカリ、安直やな)を栽培、1.8反(18a、1800u、約540坪)に作付けて23.5俵の収量。反当13俵。イネの特徴として草丈が長い。稲わらが堅い。穂長がやたら長く多粒、出穂から出揃いに1ヶ月かかった(ダラダラと出穂)晩稲品種刈り取りが9月下旬だそうです(先輩談)。
 平成14年実際に2反ほど作付けてみると先輩の言った通り。ダラダラと出穂し登熟に時間が掛かる。姿は聞いた通り沿道を通る人が驚くくらいの大きな穂。植えるのが遅かったため(5月中旬)収穫は10月上ー中旬。5条刈りのコンバインでもはみ出す程の背の高さ。収量は10.5俵/反でした。
 米粒も大きく味も「みえのえみ」より美味しいくらい。で、こいつを2年目作ったらどうなる?もし同じのが出ればF1ではないわけで看板に偽りありなわけです。
 平成15年2年目のミツヒカリを作付けてみる。どこで1年目と変化が出るか楽しみ。蒔いて植えても変化なし。幼穂形成期ころから「去年より丈が短いな」と見た目にも変化。出穂も去年より大分早いので「これは去年と違う」と思い登熟が進むとともに去年並の「背の高い」のが「ピョコピョコ」出てくる。「なんじゃこら?」
 「これは苗を間違えたかな?」と不安に。長桿のミツヒカリとコシヒカリか何か違う品種でも植えるときに苗を間違えて混ぜてしまったかようのな感じ。でも短桿の方が田んぼの中で多いので「混ぜた」は考えられない。間違えようのないように苗の区分をしたし、こんなに遅蒔きの早生短桿品種はない。イネの生育にまかせておくと、この「長いイネは晩稲」と判明。
 昨年同様、沿道を通る人が驚く。「何と何の苗を植え間違えて混ぜなさったん?」 混ぜとらへんって。
F1品種2年目、名付けて「みつひかり2世」 大笑いの2品種混植のような姿。
穂も垂れて止葉も活き活きしているみたいだが実は青い葉は未登熟の長桿のイネ。
  まさしくミツヒカリは紛れもないF1品種で、交配されている2つの品種の特徴は、
1、背の低い(短桿)で早生(わせ)(作期が早い)品種。籾(米)粒はやや小粒。耐病性は低い。おそらく良食味系特徴
2、背の高い(長桿)で晩稲(おくて)(作期が遅い)品種。籾(米)粒は大粒。耐病性は高い。おそらく多収系特徴
 この2品種の特徴がうまく交配され「多収、良食味、大粒、耐病性」のいわゆる「ええとこ取り」した品種。唯一の欠点らしきところは、出穂、登熟が不揃いで時間が掛かる(1ヶ月以上)
収量は?っていうとあんまり言いたくない反当5俵。遅い方が充分稔るまで待ってられない。そこまで放っておくと早い方が思いっきり刈り遅れる。そんな理由で去年の半分。短桿の方にイモチが発生したのも減収の一因。
そんなこんなで『大笑い「ネタ」』になった「ミツヒカリ2世」遊べる品種です。来年はこの2種類の品種を別々に作ってみようかと・・・・さてどうなることやら。(作者注*充分このコーナーの「ネタ」になった。)
つづく To Be Continue