4、 乾燥調製 、収穫後処理、
英語で言うところのポストハーベストプロセス

用語説明

農業用語講座  PostHarvest PostHarvestProcess
 ポストバーベスト,ポストバーベストプロセス
 収穫後処理、作物の収穫後に行われる作業、行程。収穫物の選別、乾燥、調整、袋詰め、出荷等の作業や行程。
 ポストバーベストと言うとマスコミでの洗脳ですぐに「農薬ブっかけ処理」と早とちりするコトバですが農学を少しでも囓った人、あるいはホントに英語の分かる人なら、本当の意味が「収穫後」と理解出来るはず。選別や袋詰めの当然収穫後に行われますから「ポストハーベストプロセスの作業を行わない作物は絶対にない」
 刈り取ったとは、籾を乾燥させますが、御存知の方も多いと思いますが私らが子どもの頃の昔は「はさ掛け」といって天日乾燥していました。圃場整備が進んで田んぼが大きくなり、機械化が進み機械も高性能化や大型化が進むと1日で収穫出来る面積も昔に比べると飛躍的にデカくなりました。そのためよっぽど「こだわっている人」や地理(形)的条件で「はさがけ」しか出来ない場合を除いてほとんど乾燥機によって籾乾燥を行っているのが現状です。
 刈り取った籾の水分は時期や登熟(稔り具合)や天候によって大きく変化しますが、一般に晴天時の収穫で25%−20%くらいの籾水分が収穫適期と言えると思います。28%を超えると早すぎて未熟米の割合が多くなりますし18%を下回ると胴割れ等が発生します。天候によっても籾水分は大きく異なり雨なんかで濡れようものなら一気に水分は高くなりますし、空気中の湿度の低い乾いた日に収穫すればビックリするほど低いときもあります。
籾の乾燥
 通常の乾燥機は「熱風」によって乾燥します。熱源として灯油を用いた火力乾燥が主流です。最近は灯油の火力乾燥でも食味が上がったり後半の仕上がり時間を短縮出来る等の理由で遠赤外線を発生さるタイプが普及しつつあります。そのほか「除湿乾燥」といって火力を使わずに要はエアコン、「除湿器」の原理で乾燥させるタイプもあります。「CO2が出ません」という謳い文句ですが(その場ではね)何トンもの籾を乾燥させるために使う電力を発生させるのにどれだけのエネルギーが必要かを考えればエネルギー効率は極めて悪いのではないのでしょか?時間がかかって仕方がないし。燃料を使わない乾燥方法として「太陽熱乾燥」があります。その名の通り太陽を集熱し熱源としてその熱風で籾を乾燥させます。この方法でも籾の循環、攪拌と送風に電力を使用します。昔勤務していた三重大である教授が行っておりました。一番「はさがけ」に近いのですが難点として「天候に左右される」、「熱風温度のコントロールが困難」という点があげられます。今のところコストを含めたエネルギー効率や作業効率の点では火力乾燥がモアーベターと思われます。

 

 御存知の方も多いとは思いますが、こんな縦型循環式乾燥機で籾を乾燥します。大きさも様々で、最小200kgから最大20トンまで多様。普通一般農家用で普及しているのが13石から30石、面積で2反ー5反用が各メーカー主力のようです。写真の右側2台が20石(約3反)左の大きいのが60石(8反ー1町用)でほとんどウチ専用。普通の収穫時の籾水分25%前後から仕上がり水分15%まで乾かすのに晴天時でおおよそ半日から20時間。普通0.5%/時間とされています。空気中の湿度で仕上がり時間は大きく変わり、雨など降ろうものなら水分計が壊れとるんじゃないかっちゅう程乾かん。
 穀物容量(張込み量)は、江戸時代からの伝統の容量単位「石数」(こくすう=なんちゃら藩、何万石の「こく」)籾1石で約100kgコンバインの小袋3つで約1石。通常1反(10アール)で20袋ですから6石の籾容量となります。200kgなら2石なので3アール分の籾しか入らない。(こんなん誰が使うんや?)今どきの機械は当然のように電子制御の全自動。上写真の左の大きいヤツは、「単粒水分計」ってのが付いていて籾を一粒づつツブして水分を測定。200粒やら測るそうで、そりゃ正確。穀物量と水分で熱風温度を自動制御しているワケですが、穀物量と水分によっては熱風温度を見ていると「ええんか?おい」っちゅうほど上がることもある。(今までの最高59度)それでも胴割れもせずにきっちり設定水分まで乾くのはさすが。昔は、乾燥機に水分計なんぞ付いていなかったから手動で2時間おきくらいに測っていた。
穀物の容量単位
 穀物の容量(容積)の単位は現在でも昔ながらの「合」「升」「斗」「石」が使われています。「合」=180ml「升」=1800ml「斗」=18Lと言うところは馴染みの深い単位です。米の場合は「1合」=150g「1升」=1.5kg「1斗」=15kgとなり「1俵」=「4斗」=60kgとなります。したがって昔諸国の米の穫れ高の単位の「石」(こく)=10斗=2.5俵となります。100万石なら2.5倍で250万俵のお米が穫れていたコトになります。ちなみに亀山藩は6万石なので15万俵でした。
  乾燥が終われば「もみすり」籾の籾殻(モミガラ)を取り除いて玄米(げんまい)にします。大昔は石臼で行っていたんでしょうが今は、「はがき一枚分(0.6mm)」の隙間のある一組のゴムロールの間を通します。この2つのロールには「速度差」が付けてあり、この速度差がモミガラを取り去る際の「ミソ」で、向き合う一対のロールに速度や径を変えて周速度差を付けて籾殻を取り去るのが主流です。「もみすり機」から出てくるのは「未選別の玄米」でこれを選別機「米選機(べいせんき)=古い言い方」にかけて身の細い「未稔実米=屑米」を取り除き(通常1.8mm程度の網目)選別された「玄米」となり、通常農家ではこの選別された玄米を30kg袋に詰めて貯蔵、JA出荷します。
 このように乾燥後すぐに籾摺りをして「玄米で貯蔵」する施設を、規模の大小に関わらず「ライスセンター(RC)」と呼び、乾燥後籾のまま貯蔵する施設を「カントリーエレベーター(CE)」と呼び巨大なサイロや貯留ビンで籾を貯蔵しています。JAなんかの施設で「なんとか米」とか書かれたのを目にしますが、あの中に籾が入っているわけです。要は一年中籾摺りが出来るわけで、収穫年度の変わり目なんかだと、どれかのサイロがカラになって居なければ新旧籾で混ざってしまうわけで、一粒残らず新旧年産米を入れ替えるのは不可能なのでは?と思うのですがどないでしょう?「一粒残さず」だぞ。ムリやって。
中央の灰色の機械がもみすり機、(ロール幅6インチ処理能力45俵/時間)その背後に米選機があり一旦二階のタンクへ上げてそこから落として計量後、写真左側の様に30kg袋に詰めパレットに。 左写真の両端にあるアーム状の物体はこれ、負圧で30kg米袋を吸い上げパレット上で投下。アイコクアルファ社製「カンタンハンド」ホンマ楽チン。これは発売の年にモニター価格で買った最初期モデル。今のと若干仕様が違う。
 自家の作付け分以外に受託で乾燥籾摺りを受けていると多い日で1日250俵、袋数で500袋。測って、秤から下ろして、袋の口を縛って、パレットに積んで、を全て手作業でやっていたらとてもぢゃないけど身体が持ちましぇーん。で、そこでこの重労働からサックリ解放してくれるのが、このアイコクアルファ社製のラクラクハンドシリーズ30kg米袋専用機「カンタンハンド」真空ポンプで負圧を発生させて紙袋を吸着。吸着すると空圧シリンダーが作動し袋を持ち上げ。目的の箇所でレバーを押して負圧を解除して投下。その間約7秒。
一度、こんなラクな機械を使ってしまえば、哀しいかな、もう手作業には絶対に後戻りは出来ない。県内でも相当数が配備されたれけど、導入して一度使ってみると、みんながみんな「やっぱ買って良かった」って絶賛、納得する機械もこの機械以外に聞いたことが無い。これが単機能特化機械のスゴさ?
「大人が普通に世間話しながら手軽に使っている簡単さ」はこちら
「小学1年の子供が(でも)面白がって使える簡単さ」 その1 その2
 早さで言えば「手で一旦馬力」で積んだ方が速いけれど、いいとこパレット2枚=40俵くらいまで。とにかく「楽チン」の一言。負荷調整で袋の重さと持ち上げをキッチリと釣り合わせれば「無重力感覚」。子供でも面白がって扱える簡単さだし、「ヘンな電気仕掛けを使っていない」(全て機械式の空圧)ものだから「まぁ壊れない」。悪くなるのは、吸着パッドや吊り上げベルト(消耗品)や経年変化で硬化する「ビニールホース」くらい。 ハッキリ言って凄い負圧(真空計で450mHG)で、カミさんが冗談で私の背中を吸わせたら「痛ーいっ」くらいの負圧。背中には「くっきり丸いあと」が・・・。そら450あるとNAエンジンの吸気の負圧が55だから約8倍。
 発売になった年に買ったものだからメーカーでは、経年変化でどこがどれだけ劣化するかのチェックを兼ねて7年目でリフレッシュプランなるオーバーホールを推奨。ホースやベルトの交換をはじめ空圧のシリンダーのオーバーホールまできっちり徹底的にやってくれる。やった後の結果、ハッキリ言って「ガワ以外は新品」です。この時来て頂いた技術の人と「背中を吸わせた」話しをしていたら、その人曰く「痛くて危ないっすよ」って。この人もやってるんや
 籾摺りのが終わって米選機で選別して屑米を抜いた玄米を通常は写真の「30kg紙袋」に入れて保管、またはJA等に出荷します。JA等に出荷する場合は、袋に、「生産者名、住所、栽培地、産年、品種等」を記入し「検査」を受けます。ここで米の等級を付ける訳なのですが現在あくまでもこの検査は品質検査とされていても「見面(みづら=外見)」ですので一等米が美味しい保証は何処にもありません。ウチの場合は低温倉庫で貯蔵して必要なだけ精米しています。
つづく To Be Continue