23.部品の使用限度
どこまで使えるモノだろう?
使えば消耗、摩耗する定期交換備品。一応交換基準は使用時間等で説明書なんかに書いてはあるが、全て書いてある訳ではないし、壊れたりそれが原因のトラブルが出て初めて「使用限度がやって来た。」と言う場合もある。
その1、吸わん
玄米30キロ紙袋を負圧で吸わせて盛り上げる「ラクラクハンド」、その紙袋を吸わせる「吸着パッド」に寿命が来ると紙袋を「吸わん」。特にまっすぐでなく斜めに吸わせるとてきめんに吸着しない。
対象物を吸着するとパッドが負圧で内側に収縮するので吸着面に「シワ」が出来る。一度出来るとこのシワは毎回同じ所に出来るので、どうしてもシワの部分が脆くなりパッドが欠けてそこから負圧漏れが生じて吸着しなくなる。
メーカーの使用限度は10000万回、5000俵となっているが、あくまでこれは最低保障数回数の様なモノで、今までの経験から軽く倍は使える。個体差はあるだろうが、最大20000俵、40000回くらい持ったこともある。
使用限度か来ると吸着面に「シワ」が出来て負圧が漏れて対象物を吸わなくなる。シワの部分の「欠け」が確認出来る。
パッドの交換は写真の様に中央部の3本のキャップボルトとハンドルのキャップボルト2本の5本のネジを外しパッドをハメ替えるだけで出来るが、左写真のパッドの中の「レンコン」状のモノが「ド鉄の塊」なので「やたら重い」ので以外とやりにくい。
外す時も、真下からネジを抜くのはいいが、外れれた時の「こんなに重たかったん?」って重量にビックリ。取り付ける時は、その重さを支えながらベルトで吊り下がった所への取り付けは以外と面倒。
左が新品、右が上の写真の使用済み吸着パッド。表面の滑らかさが見た目で明らかに違う。耐久性があるだけに見た目より以外と堅い。
その2、詰まる
乾燥機が運転中に突然詰まる事がある。機種により様々だが主な原因として、ベルトが切れたり、稀に異物が詰まったりすることもあるが、本機の下部ラセンから昇降機に籾を送る「籾送り羽」の摩耗で籾詰まりが起こる。この羽で上流側のラセンから下流側の昇降機にバトンタッチするのだがこれが摩耗すると、うまく下流側に流れないので籾がここで詰まる。
乾燥中、バーナーに火が入っているときに籾詰まりが起こり籾の循環や送風機が止まると火災の原因になるので、ずいぶん古い型の乾燥機でも運転中に籾詰まりで停止したときは電磁弁で燃料をカットして消火するようになっている。
この下部ラセンの先端(籾送り羽の付け根)にはベアリングが入っていて、ホコリの中で回っている訳でベアリングの潤滑不良−異音発生−ベアリング破損−機械停止、となりベアリング1個の為に重い昇降機を外して交換となるわけで、その際にこの「籾送り羽」が摩耗していれば同時に交換しておくことでまた昇降機外しの難儀な目に遭う事はないので「アヤしければ即同時交換」の方がベターかと。
左が新品、右が摩耗した羽。面積で約60%くらいだろうか?
減った方は、まるで行事の軍配?
その3、狂う
乾燥機についている自動水分計。設定水分まで乾くと自動で停止する便利なモノではあるが、長年使っていると、これも摩耗して水分が狂う。原理としては、受け皿の下部電極籾が入り、回転して降りてくる上部電極が受け皿の籾をすりつぶし上下電極の間の「電気抵抗の測定」で水分を測定している訳で、上下の電極の間が規定値で「正常」な数値(水分)になるわけで、この上下の電極が摩耗すると「設定隙間」が広くなり、測定値に狂いが出る。電極が摩耗すると抵抗値が上がり、実測値より低い数値を示す。
実測値より低いと言う事は、「ホンマはもっと高水分」ということになるため、同割れ等の原因になる「過乾燥」は防げるが高水分籾である。この数値をそのまま信じて籾摺りを始めると、「脱ぷし辛い」(籾殻が剥けにくい)、「選別が悪くなる」=玄米と籾がうまく分かれない、故、作業能率が落ちる。
左が新品、右が摩耗品。
この摩耗具合で水分誤差0.5−0.8%
同様にもっと摩耗しディンプルがほとんど無くなっている。
まぁここまでよく使ったモノだと。これだけ減ると誤差が1%は出る。多分17−18年は使ったと思う。(替えろよ)
まぁ、こんだけ減るまでよく使ったモノだと感心する具合の摩耗状況、どちらも15年ほど使ったと思う。右の写真の方は多分昭和60年から平成14年まで17−8年使ったと思う。これくらいの時期に摩耗しているのを全部交換した。
方法そのものは至極簡単。一度やって方法が分かれば次からは簡単なモノで、最近は誤差が出ればソッコーで交換。10分くらいでラクに交換出来るが「皿」を止める3本のネジは確か2mmのネジが使ってあるので「精密ドライバー」でないと脱着出来ない。外して「机の上」でやるつもりでないと「どこか籾の中にでも落とすとドツボにハマるよ」こんな小さいネジは、まずストックで持って無いし。
これはシヅオカのSU系以前の水分計だが、最近のシヅオカの「単粒式」やサタケの「ギアホイル」型の水分計は摩耗の心配はほとんど無いと思う。昭和末期の山本だったか金子の「トゲトゲギザギザローラー」式も長年使うと摩耗すると思うし、こいつはしょっちゅうローラーの間に籾を噛み込んだことがあったので個人的にはあんまり好きではなかった 。
とにかく籾を摺っていて「あれ?水分おかしいかも?」って思い、実測値と誤差が0.3%以上あれば、水分計の電極部を調整、交換した方がベターかと。
その4、見りゃー分かるけど・・・
籾摺りの際に、能率が落ちてきた、脱ぷ率が落ちた時や、異常なまでの音がしたときは「ロールの摩耗」。
滅多にそこまではないけど、交換せずに使い続けると、ゴムが全部摩耗して最後は最悪「芯」の鉄ロールで摺るハメに・・・。
米が割れるぞ。音も「ゴワー」ってデカいし。
まぁ大抵ロールの残量やギャップの確認の為に「のぞき穴」というか「点検窓」が付いているので、そこをみればロール残量は確認出来るので、摩耗限度の残量限界5mmまでに交換すれば問題ないのである。
まだ摩耗限度までは達していないが、交換しておけば安心な左側のロール。2つのロールは速度差が付けてあるので当然「速度の速い主軸」が早く減る。 左が新品、右が摩耗したロール。ロールは規格品なので機種が変わっても「ロール幅」が同じなら流用可能。最近楽だからインパクトレンチで交換してる。
ロールを交換する際に、図中の赤←の摺り落とした籾混じりの玄米が叩き付けられるゴム板、が摩耗して穴が空くと籾混じりの玄米がうまく拡散しないので要交換だし、ロール等のネジを外す際に「白い四角」の部分を段ボールなどで塞いで、「ネジが下に落ちないように」しておかないと「落ちればブラックホール」で、マグネットピックアップを使ってもまず取れない。昔落として泣いた経験が・・・備えあればうれしいな、もとい、憂い無し
ロールは規格品なのでロール幅が同じなら機種が変わっても使用可能。以前は左右異径ロールの機種もあったが最近は同径ロールが主流。
このゴムロールだが、昔クッションロールと言って米に優しい柔らかいゴムロールがあった頃に聞いた話では新品というか作りたての製品より製造後2〜3年間、熟成?ってか寝かせて置いた方がゴムが硬化して摩耗が少ないそうである。実際問題ストック品と買いたての比較をしたことはないので真偽の程は不明。気休めにウチでは2年分くらいのストックは持ってます。(すぐに無いと困るから)
まぁどんな交換部品でも「アヤしい」と思えば交換しておいた方が無難である。「もうちょっと使おうかなー」なんて思っていると以外と交換時期を逃してしまうモノである。
つづく To Be Continue