視界の広さと見やすさ
 トラクターに限らず、自動車にしても安全の確保のために視界は広いに越したことはありません。一般的には視界が広いほど見やすいのですが、ところが必ずしもそうではありませんでした。視界の広さと見やすさ、特に見え方は全く別問題となることがありました。
 現在、車のデザインや強度確保の為に自動車でもフロントガラスは「曲面ガラス」が当然のように使われています。昔は私が知る限り、初期型ジムニーやジープ等フロントガラスを折り畳める車はフロントガラスに平面ガラスが使われていました。(軍用のハマーも平面だったような気が)
 トラクターにおいても今ではフロントは横桟(さん)ナシの一枚モノの曲面ガラスが主流です。理由はコストの問題、「窓枠なし貼り付け一枚モノ」の方が安上がりだそうで、それと視界を遮るモノがないので視界スッキリな点でしょう。この広い視界が条件次第では以外とこれがクセモノでした。
Mトラの視界。ガラスは平面。別にこの位横桟があっても頭の位置を少し変えればタイヤは見えるので支障なし。 GMの視界。確かに広くてスッキリな視界。しかしタイヤ等足許の見やすさはMトラとそれほど変わらない。
 キャビン内での撮影位置やレンズの長さが違うので上の2枚の写真を同条件で比較は出来ないモノの、昼間のこの状態ではあんまり変わらない。しかし見え方や見やすさに大きな違いが出たのは夜間作業でした。
 自動車においては、夜間使用時の「光源」すなわちライトの位置は車体の前端の「ヘッドライト」ですが、トラクターで夜間使用時の光源位置はヘッドライトより「ルーフに付いた作業灯」。この目の高さより高い光源がクセモノで、フロントガラスにホコリが付いた状態で屋根の作業灯を点けると曲面ガラスに「映り込んで超グレア」状態で真っ白で何にも見えん。極めて視界が悪い状態に。自動車でもホコリや汚れたガラスの時に逆光になったり対向車のヘッドライトで視界真っ白になるのと同じ。
  テレビのブラウン管でもフラット、平面ブラウン管になった理由は映り込み低減、グレア防止で平面になって来たわけで、フロントガラスにしても条件は同じ。曲面より平面の方が映り込みは少ない。
 加えて上の写真左のMトラの方は、ピラーに付いた車幅灯やウインカーがうまい具合に横桟に隠れて見えないのでライトを点けたときに「余計な光」が視界に入らないので足許が見やすいが写真右のGMは右端に見える車幅灯、ウィンカーを点灯すると内側に光が漏れて意外な程グレアが発生してちょうどタイヤが見えにくくなる。
 視界がいいので見やすいと思っていたら、以外にそうではなかったのでした。