春から夏のお仕事
 田植えが終わると、次の作業としては除草剤散布になるわけですが、言っておきますが極力農薬の使用を控えていますがウチは無農薬じゃありません。広大な面積、生業(なりわい)としてやっていくのに無農薬で出来るわけがありません。
 まぁ雑草の方は、アイガモ使ったり、手で取ったり、機械で処理したりして除草剤を使わずに何とか対処出来るでしょうが病気、特にイモチ病なんかの発生しやすい気候条件の地域では、発生要因を人の手で除去出来ませんので薬に頼らざるを得ないのが実状でしょう。(ただ、籾殻等の珪酸分を含む物を施用することで稲のカラを堅くすることで少しは発生しにくくできます。)
 あのDash村でさえ一年目はイモチ病の蔓延に背に腹替えられず、イモチ病の消毒に農薬を使ったくらいですから。「無農薬栽培が如何に難しいか、また一定の収量、収入を得るためには非現実的か」あれを見て感じたのは私たち生産者だけではないでしょう。
イモチ病発症のメカニズム
風等で稲の葉や茎が擦れて植物体に傷が付いたとき、その傷口にイモチ菌が付着し水分があるとイモチ菌が繁殖し発症。気温32度以下の時におこりやすい。つまり低温多湿の条件で出やすい。夜温が下がり(日較差が大きい)霧が出やすいような気象条件の所で出やすい。平成5年、平成15年のような悪天候で多湿の場合も大発生。
 
 
 除草剤も以前に比べれば遙かに種類も増えて低毒性になっています。昔親父が後期除草剤の「サタンS」と言う薬剤(今もまだあるみたい)を田んぼに誤ってこぼして急いで泥ごとすくって取っても3年間稲が生えなかったって言ってました。そりゃ草にも効くけど稲にも効くまぁ無差別攻撃ですな。しかし今の薬剤10年前にワタシやっちゃいました。散布機の調量レバーが開いているのを知らずにエンジンスタート。リコイルを引いたとたん「ドバッ」と薬が飛び出しまして慌ててすくいましたが面積あたりの量が量「こりゃ枯れるな」と思ってましたが、全然被害なし。(ちなみにフジグラスって薬です)思ったのが「今の薬はホンマ、草に効いても稲には効かん。
 ここ6−7年で除草剤も3kg剤から1kg剤にほとんど変わりました。反1kg、軽くて良いです。って運ぶのにはね。でも慣れるまで散布しにくくてしょうがない。切り替わる時期は散布機も1kg対応ってのがなかったから。しかし今は、当然のように1kg対応だし、7cm四方に1粒落ちていれば効く。っていうリクツを聞いてから気が楽になりました。これなら楽勝にふれる。1kgを15町(ha)ふっても150袋150kgですんでこんなもん背負い式の散布機でやっても楽勝です。 
 でも、見た目にハデな機械で作業する主要作業の間に地道で地味な目立たんけれど、結構しんどい作業の繰り返し。何を言っても一番作業時間が多くて、危険が伴い繰り返しせねばならないのが、「畦草刈り」。ウチで田んぼの枚数にすると60数枚。一通り刈り終えると最初に刈ったところがええ加減伸びて来ている。これの繰り返しが夏中続きます。そのほかに除草剤使っても残った水田雑草の処理。もちろん手作業。通称「田の草取り」昔ながらの手で拾う。腰痛持ちのワタシには一番コタえる仕事。誰かこんなのやってみたい人、又は好きな人、いらっしゃいましたらご連絡下さい。「もうイヤっ」ってほどやって頂きます。 
  そのあと問題なのが肥料の散布。有機肥料を増やして一番のネックが肥料の散布。なにしろハンパな数(量)じゃないっ。調整肥1反3袋。追肥1反2袋有機肥料使用の作付9町で450袋あと化成肥料100くらい。反当1袋なら熱い時期にでも辛抱して背負式の散布機でやるけど適期に集中して反3袋は「ゴメンしてっ」ってのがホンネ。毎日の仕事でやろうと思ったら1日30−40袋が限度。一旦馬力で1日50ふっても2日が限度。何しろ新品の背負式動力散布機に付いている肥料用散布筒の肥料吐出口のゴム製部品を2週間かからずにツブしたくらいですから。農協がメーカーさんに「ひと月も、もたんだらあかんやないか」って言ったらしくメーカーさん悪がって新品1セット持ってきてくれました。すんませんKIORIZさん。
稲の生長
稲に限らず一般に植物の生長には「栄養成長期」と「生殖成長期」があります。田植えして元肥を吸ってすくすくと稲の草丈が伸び「身体が出来る時期」が栄養成長期にあたります。その後、幼穂(ようすい=穂の赤ん坊)左写真参照が出来る以降がを生殖成長期になります。
 この幼穂の長さを見て追肥を施します。この施用時期が勝負でこれで収量が決まると言っても過言ではないほど重要な作業です。
ここの肥効で穂の大きさや籾の数が決まってしまうらしい。ちなみにウチでは幼穂が10−12mmの時に一度だけ追肥をします。写真の矢印の間の長さが幼穂長となります。数カ所からブチッと茎を根本から数本引っこ抜いてきて、葉を取って鋭利な薄刃のナイフで茎を真っ二つに切って幼穂とご対面。
 で大量の資材を適期に施用する対策として機械化ってコトで管理用ビークルの導入。条件として散布精度の高いこと(設定散布量との誤差が少ないこと)散布幅に自由度の高いこと(簡単に散布幅の変更、調節の出来ること)普及所の省力栽培の研究で松阪で直播の除草剤散布をビークルで行います。とメーカーさんから連絡を頂いて見に行ったのが緊急プロジェクト対象機のプロトタイプ。機械見るやいなや「これや、これ。俺が欲しいのは。」と発売前の機械を現物も見ずに(見れんちゅーの)「出たらすぐ持ってきて」と即注文。
 平成15年は、10年ぶりの天候不順で何しろ日照時間が皆無に等しい。東北地方は7月中旬で最高気温20度以下の日が多く、警戒宣言が出たときのTVで中継していた生育調査の圃場の水温が17度や18度。おまけに雨も降っていたし、8月10日頃現在でも梅雨明け宣言出来ないらしい。
 うちら東海地方はそれほど酷くはないものの、7月中の日照時間は10年前のそれを2割ほど下回っているらしい。積算温度も少ないし日照時間も少ないので植物の光合成量が少ないため、植物体が養分となる窒素を消費しないので葉色(ようしょく)が落ちずに、追肥の適期になっても穂肥が散布出来ない。どうにか色が落ちて追肥をしたのが7月下旬から8月の上旬。この頃になると早く植えたコシヒカリの幼穂は5cm近くになっていた。
ビークルの詳しいコトはこちらへどーぞ
(画像が多いので重いのをガマンしてでも見て頂けるは方どうぞ)
 で、こういう風に田んぼの中を驀進。追肥散布作業 少々踏んでも目をつむる。作業時間は、1反10−15分程度。散布時間より資材を機械に入れている時間の方が長いくらい。畦から肥料をとばす背負式動散と違い葉先から50cm以内の高さで真上から散布するので風の影響を全くと言っていいほど受けず雨さえ降っていなければ作業可能。おかげさまで適期作業が出来るようになりました。下の写真は穂肥散布時。車高はかなり高めなのにも係わらず草丈が伸びているので完璧に機械のハラに葉先が擦れる。
 
 
さて最大の問題は、どれだけ稲を踏むか。ってことですがウチらで一般的な100mx30mの3反(30アール)圃場で2往復。すると旋回ポイントが4x2で8カ所。散布直後、踏み倒した直後で1カ所で最大7株。10株踏んでも3反で80株、約1坪強。被害株が全て埋没、枯死するわけでないので実被害株は思っているより極めて少ないのがホント。よっぽどひどい踏み方をしない限りほとんどの株は立ち直ります。下の写真は、散布直後の最大被害クラスの踏み方、こんなんで一カ所7−8株。
8月の中旬になるとこんな具合にポッカリ空いているところは完全埋没してしまったとろ。上の写真でもわかるように1条4株程度の被害。これくらいなら目をつむれる範囲。意外な効果が轍(わだち)が付くことによって給水時には水の回りが早くなり、落水時には枕地まできっちり水が落ちて乾きにくかった所もきっちり乾くようになった。予想外の意外な効果。
つづく To Be Continue